私はコーヒーが好きで、仕事中にもよくコーヒーを片手に作業し、休日にはお洒落なカフェを探しに少し離れた町へ出掛けることもあります。一日5杯以上のブラックコーヒーを飲む私ですが、今まで一番面白いと感じたカフェ体験は、イタリアのバールで飲んだ一杯でした。学生時代、半年間北イタリアのトリノへ留学していた私は、初めて触れる新鮮な文化にひたすら感動していました。全てがお洒落で華やかな国、イタリア。皆さんもご存知の通り、イタリアのカフェ文化は日本やアメリカで普及しているものとは少し違います。例えば日本人やアメリカ人が好んで飲むようなコーヒーのサイズはイタリア人にとってみれば『アメリカンサイズ』。普通イタリアでコーヒーを飲むときはほんの一口程度の小さなカップに入った濃い『カッフェ』。最初はなぜこんな一口程度のコーヒーを提供するのか、その理由や意味が分からなくてひたすら不思議に感じていました。
イタリアの至る所にあるバール(日本でいう喫茶店。タバッキを兼ねている店もあり、サンドイッチやクッキーなどの軽食も取ることが出来る)で、イタリア人は朝学校や仕事へ行く前にふらっと立ち寄って、軽く一杯立ち飲みして、少しのお喋りを楽しみます。また、バールでカッフェを一杯頼むと、一緒に小さなグラスに入った一口程度の炭酸水も提供されることがあります。しばらくして私は、それら全てにはちゃんとイタリアの伝統的な習慣としての意味があることを知りました。
これはイタリア人の友達が教えてくれたことなのですが、イタリアのコーヒーが一口の小さいサイズなのは、「コーヒーそのものの味を静かに楽しむため」だそうです。一口といっても、その味の濃さは普通のアメリカンコーヒーの倍。イタリア人にとってはアメリカンコーヒーは「水で薄めただけ」なのだとか。いまいち要領を得ない答えでしたが、自分の国のカフェ文化に並々ならぬこだわりを持つイタリア人らしいなと思いました。
また、カフェを頼むと一緒に炭酸水も出てくるのは、「先に炭酸水を飲んで口の中をリフレッシュしてから、スッキリした口でカフェの味を楽しんでほしい」という意図があるそうです。これはなかなか機能的な意味があったんだなと聞いてとても納得しました。思えばイタリアではバールだけでなく、レストランに行っても炭酸水が出てきます。これには上記のような意図の他に、「炭酸水は食事の消化を助ける」とか、「美肌に効果がある」とか、いろんな意味があるそうです。食事そのものだけでなく出し方にもこだわりを見せるイタリアの食文化(カフェ文化)には、脱帽です。